サガフロ





「逃げるな、非常食」

「こんの、手術マニア・・・!」

「手術と解剖と改造、どれがいい?」

「……ふふっ。オルロワージュの犬め」

「兄弟を殺すために、生まれて来たんだ」

「あいにくだが、ココは私のテリトリーでね」

「一一ケンカなら買うぞ……? この、ヤブ医者め」

「『片割れ』は僕のコト、なにか言ってましたか?」

「……なにがそんなに楽しいんだ? この、変態医師」

「一一また、誤認逮捕か? よくクビにならんモノだ」

「出た、恐怖のちち出しオトコ。むしろ、ちち隠しオトコ」

「……ダメだ。あの人は上級妖魔だ。中級の私では、逆らえない」

「拷問……拷問か……ふふっ……拷問、ね……ふふ……ふふふ……」

「……もう互いの用事は済んだろう。なぜついてくるんだ? ドクター」

「なんのかんの言って、セアトとの鬼ごっこを楽しんでいるんだろう……」

「教師、医者、坊主。これらの職業は『三大スケベ』と言われているそうだ」

「もし生きて帰れたら、お前に伝えたいコトがある。……待っていて欲しい」

「気配を消し、足音をたてずに移動し、感情は殺せ。そう、訓練されて来た」

「……姿をあらわせよ、ドクター。俺がひとりで喋ってるように見えるだろう」

「アタマをさげて礼儀正しく『お願い』できるのなら、考えてやらん事もない」

「せっかく『医者』が相手なんだ。『お医者さんプレイ』でもどうかと思ってね」

「ああ、患者だよ。待ち合い室で、自分のアタマを床に落とした人だろう? 患者だよ」

「なんだ、離せよ! 妖魔同士、仲良くしてればいいだろ! 勝手にしろ、バカ医者!」

「少しでいい。本当に少しだけだから、血をとらせてくれ……ほぉら、痛くないよ・・・ふふふ」

「君も分かっているだろうがね。殺しあいというのは、互いが『その気』にならねば成立しないのだよ」

「おい! いまココに、赤いちょんまげニップレスが来ただろう。どこに行った! 隠すとためにならないぞ!」

「一一じゃあ聞くケド、常識ってなにさ。多数決でもとって『多い方』が『正解』で、『常識』になるのかい?」

「妖魔というのは、プライドが高い生き物でね。誰かの下につくというのは、基本的に絶えられないモノなんだよ」

「そうか、残念だ。医者がひとりいると、なにかと便利だと思うぞ? ま、考えが変わったら、また来なさい。では、お大事に」

「一一私が一度でも『医者』という立場をひけらかして、君をバカにしたコトがあったか? 私が医者だから、君は好意を持ったのか? そうではないだろう」

「……全く、こんな所で迷子になっていたのか。この辺は入り組んでいるから、はぐれられると厄介なんだがね。一一こっちだ。今度はちゃんとついて来いよ」

「大丈夫、ちゃんと『患者』として扱うよ。君を刻んで遊ぼうなんて思ってないって。いや、ホントに。さて、じゃあ一一その手術台に横たわって……ふふふっ」

「おや……久しいな。元気そうで、非常に残念だ。変わった病気になったら、ぜひ当医院を贔屓にしてくれたまえ。一一で、なんの用かね。ちょんまげニップレスくん」

「一一人間より人間くさいヤツだな、アンタ。それでいて、やはりこいつは『妖魔』なのだと思い知らされる事が、たびたびある。しかも、『上級』。タチが悪いコトこの上ない」

「俺、アイツと『対等』になりたいんだろうか……。いつも大人ぶって、偉そうで……でも、それが正論だから余計にハラが立って・・・一一となりを歩くのに相応しい大人になりたい。アイツの目を、まっすぐ見れるようになりたい」


「やれやれ……昨日は三人しか解剖できなかったよ。まぁ、楽しかったからいいんだけど……少し物足りないな」

「フッ……プライドの高い君が、悶え苦しむ……か。楽しいだろうな……ぜひ、踏んづけて泣かせてみたいものだ。ふふっ」

「医者を敵にまわすのは、感心しないな。イザと言う時、君に妖しいクスリを『ついうっかり』使ってしまう……かも、しれないよ? ふふふ」

「……あー、分かったよ! そこまで言うなら、教えてやる。術も、勉強も。そのかわり、ちゃんとマジメにやれよ。しごいてやるさ、たっぷりとな」

「君は確かに、アタマはいい一一成績がいいと言うべきか一一しかし、やはりまだ精神的に『子供』だと感じる部分は、否めないな。ワガママで、意地っ張りで、捻くれて……実に手のかかる、かわいい子供だ」

「君の方が、ずっと妖魔らしいと感じたよ。『何者をも魅了する美貌』、『何事にも屈しない誇り』……そして『全てを威圧する恐怖』・・・君はその全てを持っている。一一惜しいな。そのままでも、性格だけなら上級妖魔なのに」

「またケガをしたのか。もしや、私に会いに来るための口実か? ふふっ、冗談だ。そうならいいと思っただけさ。一一はい、おしまい。しばらくは安静にするように。風呂はかまわんが、激しい運動は禁止だ。では、お大事に。ご愁傷さま」

「ようこそ、おいで下さいました。マジック・キングダム、修士修了生一一ブルー、さま。わたくしの名は『妖魔』でも『医者』でもございません。『ヌサカーン』と申す、しがない低俗のあやかしでございます。どうぞ、お見知りおきのほど」

「ふぅん……おもしろいな。君は、立っていられるのか。私が少し強めに妖気を放てば……弱い人間なら、すぐにその場で昏倒するのに。瘴気に慣れているのかな? ふふっ……だが、すでに足下がふらついているな……大丈夫か? ふふふ……」

「一一診察してやる、と言ったのだよ。今度は聞こえたかね? 心配するな、診るだけだ。別に『吸ったり』はしない。一一妖魔は剣などの『武具』で『能力』を吸うコトができるんだ。……赤いカオをして、なにを想像した? この、むっつりスケベ」

「やれやれ、なんてクチの悪い子供だ。いやぁ、結構、結構。実におもしろい。この私に、それだけ偉そうなクチをきくヤツとは、そうそうお目にかかれない。しかも、人間。ククッ……ああ、失敬。そこに座りたまえ。さて、なんだ。『ルーン』の話だったかな……フッ……ククッ・・・」

「……それが人にモノを聞く態度なのか? フッ、まぁいい。教えてやる代わりに……少し、楽しませてもらおう。私が協力してやってもいいと、思えるかどうか……軽いテストをさせて頂く。試験は得意だろう? 見るからに優秀そうだものな。一一さて、始めようか……魔法学校の、優等生サン?」

「暴れるな、ただの痛み止めだ。徹底的に痛めつけてしまったからな。そのままじゃ、立つ事なんてできやしないだろう? どれ、キズを診てやろう一一ほら、暴れるなと言ってるだろう。……なんなら、失神を誘発させる『β刺激薬』でも投与してやろうか……? それとも、私の『血』がいいか? ふふふっ」

「まぁ、妖魔だからね。相手が同じ妖魔でなければ、誘惑して魅了させる自信は充分にあるし、実際、可能だろう。いままでも、欲しい『モノ』にはそうしてきた。精神を破壊して自我をなくさせ、傀儡にし、私のそばに置く。壊れたら捨てる。ソレを繰り返していた。一一久々に試してみようか……君で。……ククッ、そんなに殺気をみなぎらせるな。いまのは全部、冗談だよ。まったく、からかいがいのある子供だ」

「どうだ、あの『眉間にシワ』とはうまくいっているか。アイツは怒ってばかりいるだろう? 嫌気がさしたら逃げて来たまえ、グチぐらい聞いてやる。なんなら、このクスリも分けてやろう。こっそり、アイツのカップに混ぜてやれ……楽しいコトが起こるぞ・・・ふふふ一一ああ、イルドゥン。いいタイミングだね。コレからお茶にしようと話していた所だ、君も飲むだろう? アセルス、その棚からカップを三つ出してくれ……ふふっ」


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