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「明けましておめでとう」 「こちらこそありがとう」 「……いや、礼を言われても」 「あけまして、閉めました」 「行儀がいいな」 「去年は、お世話になる予定はございませんでした」 「そ……そうですか」 「無念」 「しゃがみこんでひらがなの『の』を書くほど、ヘコむ事なのか」 「今年もやらしく」 「ぬあっ!?」 「明けてしまいました」 「なんだ、その残念そうなモノの言い様は」 「年賀状を書いていません」 「そういえばお前からもらってない」 「いまから送っては遅くなるので、手渡しです」 「うむ、いただこう・・・一一なんだ、コレは」 「リーマスにスーツを着て頂きました。リーマン・リーマスです」 「なぜ新年そうそう、腹黒いものを見なければいけないのか」 「あなたはリーマンになるからです」 「勝手に決めるな」 「早くもおせちに飽きました」 「ラーメンでも食え」 「ラーメンは旅に出ました」 「またか。仕方のないヤツだ」 「刺身を食したい方向です」 「刺身はたこうございます」 「釣って下さい」 「この寒い中、釣りに行けと?」 「ゴー、海」 「却下。寒い」 「気合です。激辛カレーでも食べれば、温かくなりますよ」 「俺は猫舌だ。辛いモノはご遠慮」 「ほら、じゃれますか?」 「顔の前で羽をふるな」 「新年そうそう、アバダ・ケダブラです」 「物騒な」 「夢を見ました」 「どんな夢だ。富士山やナスは出たのか」 「アバダ・ケダブラです」 「だから、なんだソレは」 「死の呪文です」 「ソレは分かってる」 「類似品として『ムド』『デス』『ザキ』などがございます」 「ムド、とはなんだ」 「『ムド』は女神転生、『デス』はFF、『ザキ』はドラ食えです」 「食うな」 「トンベリの『みんなのうらみ』は、デスに匹敵する威力です」 「トンべリ? 酒か」 「ソレはドンペリですよ。やれやれ、コレだから庶民は」 「一一だから、アバダ・ケダブラが、どうした」 「ああ、痛いですよ、痛いですよ」 「フッ、ざまあみろ」 「5点」 「なんの点だ」 「あなたのにせものがあらわれました」 「そうか。大変だな」 「とうっ!」 「いててててっ……こら、なにをする」 「ニセモノは本物以上に本物っぽいので、あなたは今日からニセモノです」 「無茶いうな」 「というワケで、ニセモノを退治します。覚悟っ!」 「どういう理屈だ!」 「はい、あーんして下さい」 「…………」 「おいしいですか?」 「ああ」 「よかったーっ。はい、じゃあもうひとつ」 「なぁ……」 「はい、なんですか?」 「さては君……にんじん嫌いだね?」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「はい、あーん」 「図星か」 「あの、これ……読んで下さいっ!」 「……文字が個性的で、読めないんだけど」 「すごい散らかりようだね。本だらけだ」 「……これでも三日かけて片付けたんです」 「甘酒、ありがとうございます」 「ああ。飲んでくれ」 「……はぅっ・・・!?」 「甘酒ごときで酔う子、初めて見た」 「どうぞ。ウイスキーボンボンです」 「ああ、ありがとう・・・一一あの」 「はい?」 「君も食べるの?」 「はい」 「やめておいた方が」 「大丈夫です。頑張ります!」 「・・・そうか」 「……はぅっ・・・!?」 「・・・・・・ちょっとおもしろい」 「や。元気?」 「おっ、来たな。ま、テキトーに座れ」 「うん」 「紅茶か?」 「まかせる」 「……なぁ」 「なに?」 「この部屋、寒いか?」 「いや、別に」 「じゃあ、マフラーぐらいとったらどうだ?」 「・・・・・・」 「……なんだよ」 「・・・・・・」 「なんとか言えって」 「一一そうそう。差し入れがあるんだ」 「なんだ、そのわざとらしさは!」 「なにが?」 「なにがじゃねぇ!」 「なに怒ってるの?」 「……ちょっとそのマフラー、とってみ」 「どうして」 「いいから!」 「んー、どうしようかなぁー」 「……なに隠してンだ?」 「なにも?」 「うそつけ!」 「ついてないってば」 「……まさか、キスマークでもつけてきたか?」 「・・・・・・」 「とれよ、マフラー」 「一一ひとつ、提案」 「・・・なんだ」 「コレをとって、もしなにもなかったら……どうする気?」 「ど……どうって……」 「エンザイの疑いをかけた罪は重いよ?」 「うぐっ……」 「むこう一ヶ月、私の夕食をおごる。……どうする?」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「……分かった。取れ」 「はい、どうぞ」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・ねぇな」 「あるわけないでしょ。はい、コレで一ヶ月の夕食、確保!」 「ぐっ……!」 「いやぁ、こうすんなりうまくいくとは思わなかったー」 「は……?」 「だから、夕食、確保。一ヶ月」 「・・・・・・・・・お、おまっ……初めから、そのつもりで……!?」 「そ。ワザとマフラー取らなかったの。やーい、単純。ひっかかった、ひっかかった、ばぁーっか」 「こ……このっ・・・!」 「はぅっ……!?」 「夕食の代わりに、マジでマフラー取れなくさせてやる! 覚悟しろ!」 「はうぅっ!?」 「はい、先生。ココアです」 「ああ、ありがとう」 「先生は、ミルク入れますか?」 「いや、私はいいよ」 「そうですか。じゃあ、私だけ頂きます」 「君はいつも、ココアにミルクを入れるの?」 「はい」 「へぇ。その方がおいしいとか?」 「はい。甘さが控えめになって、私の好みです。それに一一」 「うん?」 「ミルクを入れると、先生の髪の色に近くなるから……」 「……ああ、どうしよう」 「先生? きゃっ一一」 「ぎゅっ、てしたくなる」 「せ、せんせっ……」 「暴れちゃだーめ」 「は……はい……」 「先生、今夜はなにが食べたいですか?」 「・・・・・・」 「た……『食べ物』で、です!」 「なにも言ってないだろう」 「はぁ、ノドがかわいたー」 「・・・・・・」 「な……なにを飲ませる気ですか!?」 「なにも言ってないだろう」 「ふぁ……熱い……」 「・・・・・・」 「ふ……風呂上がりだからですっ!」 「……遠回しに、誘ってるのか?」 「はぁ……風邪気味かも……」 「・・・・・・」 「え……えっちなお注射する気ですね!?」 「……いっそ、本当に襲ってやろうか」 「あいつに手を出したら・・・一一ヤるぞ?」 「一一その『ヤる』とは、どういう漢字を書くんだ……?」 「・・・・・・」 「な、なんだ」 「……知りたいのか?」 「もっと、話して……ささやいて……先生の声が、好き・・・」 「一一声、だけかね……?」 「どうだった? 凄かったでしょ」 「ああ、惚れ直した」 「……惚れ?」 「あ、あ、いや……見直した」 「・・・・・・ふぅん?」 「うぐっ……」 「あー・・・目が疲れた……」 「・・・・・・」 「んっ……・・・な、なにするんですかっ……」 「私の前で目を閉じる、お前が悪い」 「秘義! ポケットを叩いてビスケット分裂の術!」 「やってみたまえ」 「とうっ! どうだ! 見事、ふたつに増殖!」 「割れただけだろ」 「うわぁ……ムチですね・・・痛そうー」 「安心しろ。私は痛めつける趣味はない」 「……なぜそこで、私を見てほくそ笑むんですか」 「一一俺たちの決まりごと、か……?」 「本気でつらい、苦しい、やめて欲しいと思ったときは、『助けて』と言え、と言われてます。そうすれば、手を緩めてやるって……」 「まぁ、いまの所、言われた事はないがな。『もう許して』なら、何度もあるが。一一アレは違うんだろう?」 「や、やめて下さいってば……!」 「アンタの彼氏、どのぐらい?」 「んー・・・ほろふわい?」 「……クチを開けるな。生々しい」 「い……たっ・・・っ一一」 「・・・・・・」 「やめ……っく・・・痛い、やめっ……・・・ん、ふっ……」 「……フッ・・・痛いだけ、か?」 「僕は三月」 「えーっと・・・誕生石は『アクアマリン』だって。宝石言葉は、『沈着、心の平和』」 「この三人の中で一番、せっかちでやかましいヤツなのに」 「フッ、賑やかなのはいいコトではないか」 「俺は一月」 「誕生石は『ガーネット』。宝石言葉は、『貞操、真実、友愛』」 「万年発情期が『貞操』ねぇ」 「るせ。そーいうお前はどうなんだ?」 「私は四月だから、ダイヤモンド」 「・・・清浄無垢……」 「まさか……あの腹黒が……」 「・・・・・・・・・。へぇ?」 「一一ひいぃっ!」 「ハンバーグと味噌豆腐とさわらのムニエル、どれがいい?」 「えーっと・・・」 「じゃあ、ビタミンAとカルシウムと脂質、どれがいい?」 「いや……お前みたいな栄養素フリークじゃねぇから、なんとも……」 「ハラ減った〜、今日の晩メシ何?」 「じゃがいも、にんじんを細かく切り、フライパンを温め、牛肉から脂身を取り、肉を一口サイズに切って、取った脂身をフライパンにひいて油を溶かし、ボールに塩、こしょうをふりかけ、ソレに肉を入れてよくなじませ、じゃがいもをいため、黄色くなったらにんじん、肉をいため、ソレをナベにうつし、水をくわえてあくを取りつつ中火で煮込み、フライパンにバターを溶かし、たっぷりのみじん切りたまねぎをいため、ナベに入れて、カレールーをくだいて溶かし、さらにチョコレートでまろやかさを表現できたらできあがり、の食物」 「……素直にカレーライスと言えや、ねーちゃんよ」 「一一と、見せかけて、カレーうどん!」 「いや、晩メシにひっかけとかなくていいですから」 「二人っきりだからって、エロいコトすんなよ……」 「それは女である私のセリフよ!」 「それなに?」 「ファン・ムック」 「プロペラのついた赤いモップか」 「あれは雪男だろ」 「雪男にプロペラはないだろ」 「モップにもねぇだろ」 「プロペラモップは、来年の秋に全国一斉ロードショー」 「どんな内容だ、そりゃ」 「ハードアダルト成人指定。キーワードは監禁、獣姦、触手、汁、3P、抹茶」 「ポイントが多すぎて、どっからツッコんだらいいのかワカリマセン」 「どこにツッコんで欲しいのか、そのクチで言ってみな」 「ンじゃ、とりあえず抹茶」 「ある時は飲み物、またある時はチョコレート……自在に姿を変える、神出鬼没の、ナゾの怪人……」 「しこうして、その実体は一一?」 「冬期限定の男子校」 「やっていけんのか、ンの男子校」 「しかも食べれるぞ」 「食うな」 「なめらかで濃厚な抹茶を、お前のナカにぶちまけてやる」 「あとでちゃんと掃除しろよ」 「んもう、コレでデキちゃってたら、責任とってもらうから!」 「ツッコむポイントはひとつにしてくれ」 「複数、ツッコむ気か!?」 「お前の場合、ひとつじゃ足りねぇだろ」 「ぼ、僕……そこまでハードなMじゃない……」 「俺はSでいい」 「え……Sなのかっ・・・」 「最近、わりと小食だから」 「Sなのに小食……はっ! さては、焦らす気だな!?」 「空気を吸わせ、追いつめて弱らせてから、引きあげる」 「し・・・しかも、鬼畜っ……!」 「釣りはたまにやる。楽しい」 「焦らし攻撃を楽しんでいるっ……!」 「キャンプでやる。釣ったその場で焼いて、みんなで食う」 「や……屋外!? しかも、複数で食う……っ!」 「好物だから、何杯でもイケる。三日連続でも食える」 「屋外が好物……三日連続、何回も……わ、ワイルド……」 「今度、ふたりで行くか? 楽しいぞー、一週間のキャンプ」 「鬼畜な君と屋外・・・一週間、焦らし攻撃・・・一一ぶっ」 「おい、どーした? なに鼻血だして倒れてンだ?」 「はぁ……やりたいなぁ・・・」 「・・・・・・」 「いや、スキーのコトだから。上着を脱ぐな。にじり寄るな。目を閉じるな。クチビルを突き出すな」 「おう、聞け! もう、とてつもなくすげぇコトがあったんだ! もう、もう、もう、もう、もう!」 「お前はウシか」 「ややっ、エロ本をベッドの下に隠している! 弟よ、男子たるもの、正々堂々と本棚に並べたまえ! 『私はこういうエロ本を愛読している!』と、家族にアピールしたまえ! ああ、なげかわしい! お兄ちゃんはお前を、そんなふうに育てた覚えはアリマセン!」 「一一まず、ひとつめ。わたくしも育てられた覚えはアリマセン。ふたつめ、そんな事をアピールしてどうする。みっつめ、俺に兄弟はいない。そして、よっつめ。一一お前は、誰だ。どこから家に侵入した」 「これいくらですか?」 「当店は百円ショップです」 「そこで写真とろうぜ」 「いや〜ん、タマシイとられるぅ〜」 「えー、『 IAEA アイエーイーエー』。えー、コレは『 International インターナショナル、えー、Atomic アトミック、えー、Energy エナジー、えー、Agency エージェンシー』の略であり、えー、『国際原子力、えー、機関』のコトである。えー、コレは原子力の、えー、平和利用を、えー、促進するタメ、えー、国際連合の下に、えー、設立された、えー、国際的な、えー、協力機関である。えー、一九五七年に、えー、発足した。えー、平和利用に関する、えー、技術情報の、えー、交換、えー、原子力施設の、えー、運転の、えー、安全基準作成、えー、軍事目的に、えー、転用されんよう、えー、コントロールするなどを、えー、目的とー、している。一一えー、君。大丈夫ですか?」 「ハイ。死にものぐるいで起きてます」 「勘違いするなよ……私は、お前なんか・・・」 「ああ、分かってるよ。いいからいまは黙って寝てろ。ハイ、オヤスミ」 「ひどいわ……! もう私を愛していないのね!」 「君の言う『愛』とは、私がチョコレートを買ってやるか、やらんかによって変化するのかね」 「それじゃ、まるで私が『餌付けされたペット』みたいじゃない!」 「『みたい』ではなく、私の『ペット』だろう? ほら、お手」 「私と彼女は恋人関係にある。一一というワケで」 「なぜカギをかける。なぜ服を脱ぐ。なぜにじりよる。どこから出した、そのロープ」 「なんで歯ブラシがニ本あるのかな? 浮気してる?」 「……奥歯用と前歯用だよ」 「へっ、矢でも鉄砲でもロケットランチャーでも戦車でも持って来い、コラ!」 「はい、リーマス」 「……ゴメンナサイ」 「コーヒーと牛乳を混ぜたら、コーヒー牛乳!」 「うん」 「じゃあ、鬼畜と腹黒一一」 「混ぜるな危険」 「私の特技は召還魔法です!」 「やってみたまえ」 「召還! 大量のミカン星人!」 「……昨日マジックを私から借りて、徹夜でやっていた事はソレか」 「せーんせ。誕生日、なにが欲しい?」 「新しく発売された媚薬」 「さーて、ケーキはどれにしようかなぁー」 「ガラナチョコのケーキ」 「お料理に飾り付けに〜」 「君の裸体にリボンを巻き、四十八手で朝まで食べる」 「あー、忙しい、忙しい〜」 「逃げるな」 「この、ひとでなし!」 「はい、ヒトデと梨」 「うぬぬぬ……寒いシャレを言うなと突っ込むべきか、なぜ“マイ・ヒトデ”を所持しているのかと突っ込むべきか……!」 「バーゲンセールにて入手。ひとつ五八〇〇円なり」 「バーゲンのクセに安くないしカワイイとは思えないしわざわざヒトデを買うメリットが私には理解できない許せうあぁぁぁぁああああ」 「コードレスの電池式にございます」 「ヒトデになぜか電池挿入口さらにアンテナ装備いまならもれなく“ミニヒトデ”プレゼントうあぁぁぁぁぁぁぁあああああ」 「いえーい! 罰ゲームはお前に決定!」 「ハイハイ、晩メシおごればいいんだろ? なに食いたい?」 「お前♪」 「・・・一一赤と青、どっちが好き?」 「永遠に変わらぬ愛を誓いますか?」 「……前向きに善処します」 「ンだよ……ずっとソイツにつきっきりで……」 「……悪い?」 「さっきから俺の方なんて見向きもしねぇ……」 「暑いからね。あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 「扇風機から離れろ、コラ! 俺と遊べ、コラ!」 「……先生、質問があります」 「なんだね」 「さっきからやってる、自分の唇を指でなぞるエロいしぐさは……もしや、誘ってます?」 「・・・愚問だな……」 「一一っ! だから、耳元でエロボイスをささやくなーっ!」 「吾輩は猫である」 「吾輩も猫である」 「なぁ、俺は短気なのかな……?」 「ああ、確かに君はたぬきだね」 「誰が『たぬき』だ」 「おい、ヨーグルト食べる。開かない。開けろ」 「命令系ですか。どれどれ……うわっ、顔に跳ねたっ!」 「……ふっ」 「……なぜそこで前屈みになるんですか。何ですか、そのエロくさい笑みは」 「アイツはすげぇヤツだ。俺の次に」 「君、しばらく『へたれ』禁止」 「一一ふっふっふ……蛙チョコレートだ」 「か、蛙チョコレートは……蛙チョコレートだけはやめてぇっ! ああっ!」 「お前、俺が寝てるあいだに髪みつ編みにして、カオにヒゲ描いて、女装させただろ?」 「違う、手足しばったのが抜けてる。僕がやったのはソレだから。ダメじゃないか、ちゃんと覚えてないと」 「アイツこえぇ……まーだドキドキしてらぁ……」 「恋だろ、コイ」 「……いいのか? テイコウすンなら……アイツ、どうにかしちまうぜ?」 「よせ……! 分かった……お前の言い分を聞こう……」 「なっ……舐めたっ……ゆび舐めた……っ!」 「ケガをするからこうなる。コレに懲りたら、授業には集中することだ。ただでさえ、薬学は危険な課目なのだからな」 「集中できないのは先生のせいです。エロ薬学教師」 「……ベッドの上でなら集中できるかね」 「まぁまぁ。オオカミが犬にじゃれてるみたいなものだから」 「アレを『じゃれてる』で済ますか、お前は」 「この、悪女めが」 「失敬な、毒女ですわ。悪女だなんて、わたくしそんな安いオンナではございません」 「私利ウス?」 「尻臼?」 「幸薄?」 「シ・リ・ウ・ス・だ! とくに最後! 全然ちげぇぞ、コラ!」 「心配いらないよ。彼はきっと一一何か、変なものでも食べたんだ」 「さっき君の作ってくれたシチューを食べたけどね」 「私はごく普通の一般人です」 「私は『ごく普通の一般人』のストーカーです」 「私は『ごく普通の一般人』にストーカーをしてる彼の、ストーカーです」 「私は『ごく普通の一般人』にストーカーをしてる彼に『ストーカー』してるストーカーです」 「私は彼らの状況を不振な目で見ている、ごく普通の一般人のフリをした、女装してる元・オンナの変装をした、ストーカー見習いです」 「私は彼らの会話を聞いて混乱している、警察官の制服を着たストーカーです」 「場のシチュエーションに合わせて、MだったりSだったり」 「と言うより、付き合う前はMを演じて、付き合ったらSに豹変する」 「一種のサギだよね」 「むしろ磁石」 「磁石はNだろ」 「Nは沖縄に駆け落ち中。繰り上げ当選」 「帰ってこい、N、パパが悪かった」 「Nから電話がきました。ラーメン二つ」 「間違い電話かよ」 「一一を、かぶって沖縄に来い」 「かぶってどうすんだよ。しかも命令系かよ」 「どんぶり戦隊メンレンジャー」 「弱そうだな、おい」 「戦いのあとはラップをかけて冷蔵庫」 「ヒーロー再利用かよ」 「地球に優しいメンレンジャー」 「三分で完成、メンレンジャー」 「のびると戦えないメンレンジャー」 「役にたたねぇヒーローだ」 「へたれンジャー」 「ひまジャー」 「ブラジャー」 「炊飯ジャー」 「立て、立つんだ、ジャー」 「ハリーポッターと明日のブラジャー」 「……キスする時は目をとじるものでしょう」 「……お前こそ、とじたらどうだ」 「んー、ちっちゃいなー。可愛いねー。五、六才ぐらいかな?」 「お前がロリコンだったとは知らなかったな」 「失敬だぞ、君。僕は女性なら年齢・メス・めしべ問わずオールオーケイなだけさ」 「いや……動物と植物はさすがに友人として一言忠告させて貰うぞ」 「おう、聞け聞け! おもしれぇケイケンしたぞ! さっき男の俺がチカンされた!」 「あ、それ僕」 「ばっ、バカっ……なんてトコ舐め……っ……よ、よせ、手をっ一一ああっ!」 「・・・」 「こんなに溢れさせて……しつけのなっていない身体だ。限界か……? まだ何もしていないのに、今にもはじけそうだな……」 「……ヤロウ同士のエロ小説を、感情を込めて読むんじゃねぇ。いや、カモンじゃなくて」 「俺の名前は、澄み切った冬の空にきらめく星・シリウス」 「一一シリ?」 「誰が尻だ」 「子供が好きなのか」 「はい、とっても。ほら、あの小さいコとか、可愛い」 「ああ、あの黒髪の子か」 「やっぱり髪は黒が一番ですね。ホント可愛いなぁ」 「……欲しいなら協力してやろうか?」 「……なぜ上着を脱ぐんですか。何ですかその不敵な笑みは」 「ほれ、来た。アイツだ。イヤミで贔屓でインケンな眉間にシワの薬学教授」 「……ニ十年後の僕を言われてるような気になるのはなぜだろうな……」 「ああして始終ベッタリさ。彼の後ばかり追いかけて行くんだ」 「スリコミだろ。最初に見たの親だと思うっつーアレ」 「あのコは僕らが守ってあげないと。なにせ彼は」 「羊の皮をかぶった一一」 「一一かぶった……なにかな? そこの二人」 「……な……んでも……ゴザイ……マセン……。可愛らしい仔猫さんをお連れでいらっしゃる……」 「先生……教師と生徒じゃ、問題があるのは分かってます。親子ほど年の差があるのも知ってます。でも……でも、先生……!」 「……私は『課題をやってこなかった理由』を聞いているのだが」 「あの腹黒魔王を泣かせられるのは、あとにも先にもタマネギぐらいだよね」 「……お前、後ろ向くなよ」 「こういう寒い日は、一緒のベッドで暖めあって眠ろう……」 「素直に『ホラー小説よんでたせいで一人で眠れない』って言えよ」 「へんじが、ない。ただの、しかばねの、ようだ」 「タンポポから返事が来たら怖ぇし、タンポポに体育座りで話しかけるお前自身も、そうとう怖ぇよ」 「好きなんだ……抱かせてくれ……」 「……このネコを……だろ? 普通に言え、普通に」 「気分が悪いんです……吐き気がして……それに見て下さい、何だか昨日よりお腹がふくれて……!? ああ、まさか……まさか、私……!」 「食べ過ぎだ」
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