甘えた





「はい、あーん」

「おーそーいー!」

「この、甘えっこ」

「……まるで猫だな」

「こーら、じゃれるな」

「アタマ、なでなでして」

「んー・・・あったかーい」

「こっち向け、こっち向け」

「ちょうど君のコトを考えてた」

「……ほら、もっとこっち来いよ」

「部屋に戻ったら、ひざまくらして?」

「素直に『寂しかった』って言ってみ?」

「このコート……あの人の香りがする……」

「かまえーかまえー。もっと俺にかまえー」

「終わるまで待っててやるよ。だから早くしろ」

「えへへー。くちびる、ゲット・トレジャー!」

「分かった、分かった。毎晩、電話してあげるから」

「んー、眠いー・・・部屋まで連れてってー・・・」

「なにって……寒い日の正しい暖の取り方、『人肌』」

「……まだかなー・・・早く帰って来ないかなぁ・・・」

「帰るのも面倒臭いなぁー・・・泊まっちゃおうかなぁー」

「お前はそうやって、すぐ俺のヒザに乗りたがるんだから」

「せっかく私をゲットしたんだから、大事にしろ。もっと愛を注げ」

「空いてるんだから、もう少し離れろよ……ったく、お前は・・・」

「そんなに嬉しいのか……なんだか、犬のしっぽまで見える気がする」

「『会いたかった』って……ほんの十五分程度、席を外しただけじゃないか」

「もうすぐ日が沈んじゃうな・・・一緒にいられるのも、あと少しだけ……」

「ばっ、バカ、街中で手なんかつなぐなって……ほら、見られてるだろ……」

「ねー、ごはん作って? あなたが作ったモノ『だから』食べたいの。ね、お願い」

「こら、ついてくるなって言ったろう。……もう、しょうがないなぁ。はぐれるなよ」

「私は、人に素直に甘えるというのは、どうにも苦手で……コレがせいいっぱい……です」

「そんな……そんな……明日から出張だなんて……! 二日も離れるなんて耐えられないっ!」

「本当は、俺にかまって欲しくて仕方なかったんだろう? お望み通り、たっぷりと遊んでやるよ……」

「……また出かけるのか? 行くなよ。ココにいろ。ほら、座れ。ハラ減ってないか? なんか作ってやるよ」

「僕はね、こうして君の体温を感じられるだけで、とっても幸せになれるんですよ。君はどうですか? こうして背後から抱きすくめられるのは、イヤ……ですか?」


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