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「ヒデ! ヒデヒデヒデヒデヒデ!」 「うるさい、丹羽」 「祭りだ! 祭りやってるぞ! 夜店だ!」 「ああ……さっきから聞こえてくる耳障りな太鼓は、そのせいか。本に集中できなくてかなわない」 「……お前ってさぁ、ほんっとクールだよなぁ。年に一回、一晩限りの夏祭りだぞ! ちっとはワクワクするとかってねぇのかよ?」 「ない。あんなの、人ごみがうっとうしいだけだ」 「なんでだよー、楽しいじゃねぇか。射的とか、三角くじとか、焼きそばの屋台とかさー」 「金魚すくい、花火、ソースせんべいのルーレット、か?」 「おうっ! お前だって、ラムネ飲みながら歩いたりとかしただろ?」 「ラムネって、あのサイダーみたいなヤツだろう。俺は甘いものは嫌いだ」 「そっか。俺さぁ、ガキのころ、アレのビー玉が取りたくて取りたくて、やきもきしたモンだぜ」 「ビー玉、か……どうせなら、もっと別のモノを・・・一一」 「俺の地元だとさ、こおりの重さ当てクイズとかあったんだよ」 「一一こおり?」 「おうっ!」 「こおりは挿れられないな……凍傷になる……」 「入れるって、なにがだ?」 「いや、なんでもない……」 「なに笑ってンだよ……変なヤツだな」 「で、こおりがどうしたって?」 「ああ、でな。夕方四時現在で重さ何キロ、ってヒントが書いてあってさ。それで、祭り終了の夜九時に、ソレが何キロまで減るかを当てるんだ」 「水のムダ遣いだな」 「ま、そう言うなって。ガキにとっちゃ、楽しみのひとつなんだからよ」 「ふぅん」 「正解に一番近いヤツが、こんなでっけぇクッキーの缶をもらえるんだ」 「子供は甘いモノが好きだな」 「ははっ、だな。しかもソレ、一緒に行ったダチが当ててさぁ。すっげぇうらやましかったなぁ」 「……お前の友人、か」 「すげぇんだ、屋台でハムスターやうさぎまで売ってるんだぜ!」 「ハムスターは間に合ってる」 「そのダチがさ、ハムスター2匹とうさぎ1羽、買ってたぜ。両手にりんごあめとか、わたあめとか、持ちきれないほど持ってるクセにさ。そのうえ帰りに、カメまで買おうとするんだぜ?」 「へぇ……」 「そいつんち、すでに鳥だのうさぎだの犬だの飼っててさ。それに、携帯ゲームの育成とかまでしてるんだ。『ソレだけいるのに、お前まだ飼うのかよー』って、ふたりで大笑いしたなぁ」 「・・・一一ふぅん……」 「あと、ビンゴカードのゲームとかもあったぜ。景品はなんと自転車だ! マウンテンバイクだぞ!」 「それは豪華だな」 「だろ! しかも先着で3人まで当たるんだ!」 「一一で、外れたのか?」 「ああ……。でも、途中まではかなり調子よかったんだぜ。あとふたつ数字が出れば、自転車ゲットだったのになぁ……」 「ソレは残念だったな」 「俺もダチも、なにも当たらなかったよ。仕方ねぇからって、ふたりですみっこ座って、かき氷のヤケ食いだ」 「……ふぅん。ハラを壊すぞ」 「へーきだって。ンで、そのダチがさ、シロップを5種類ぐらいムリに頼んで、どばどばかけてもらったんだ。すっげぇ色になっておもしろかったぜー。アレはもう食いモンの色じゃねぇな、ははっ」 「・・・・・・・・・」 「やきそばに紅ショウガついてるだろ? あんなのとかも好きなヤツでさー、わざわざ俺のまで『くれ』つって、取るんだぜ」 「・・・・・・・・・」 「おい、聞いてるかぁ? ヒデ」 「……ああ」 「そういやファミレス行った時も、そいつがチョコレートパフェ頼んでさ。あ、ダチは男だぜ? でも、甘いモンとか好きなヤツでさ」 「・・・・・・・・・」 「パフェのてっぺんに葉っぱが乗ってンだよ。小せぇの。普通そんなの、気にもせずどけるだろ? でもそいつさ、『ミントかな?』つって、食うんだぜ」 「・・・・・・・・・」 「そしたら『ハミガキ粉の味がする』とかワケ分かんねぇコト言ってさー。こいつおもしれーとか思ってなぁ」 「・・・・・・・・・」 「パスタはミートソースばっか食うヤツでさ。ファミレスって、粉チーズあるだろ? これくらいの、緑で細長いやつ」 「・・・・・・・・・」 「店員が『おかけしましょうか?』っつうのわざわざ断って、いなくなったスキに、これでもかってほどかけまくるんだよ」 「・・・・・・・・・」 「いつまでもチーズの容器ふってるからそいつの皿みたらさ、もう驚いたぜ。ミートソースの赤が行方不明になってンだよ」 「・・・・・・・・・」 「皿いっぱいに、チーズてんこもりだぜ? いくらタダつっても、ミートソースをチーズの山で遭難させンなよって感じだよなぁ。アレじゃ『ミート』つうより、チーズ・スパゲティ一一」 「・・・・・・丹羽」 「ん? どうしたぁ、ヒデ」 「お前とその『ご学友』が、どれだけ仲がいいのかはよく分かった。そろそろ黙れ」 「お、おう・・・お前……なんか、怒ってないか……?」 「そうか……怒ってるのは分かるのか……少しは成長したな、丹羽……」 「なんだよ、変なヤツだな。一一あ、そうそう! さっき啓太と遠藤に会ったんだけどよ、すげぇの食ってたぜ」 「ふぅん、なんだ。どぎつい色のかき氷か? それとも、チーズ・スパゲティか?」 「聞いて驚け、松坂牛のステーキだ! その屋台、すんげぇ人だかりだったってよ」 「一一屋台でステーキ?」 「おうっ! 夜店で松坂牛なんて珍しいよな。しかも、たった九百円だぜ?」 「夜店……ああ、例の夏祭りか」 「あ、そうだ! だから祭りだよ、祭り! なぁー、早く行かねぇと売り切れちまうよ!」 「本物かどうか怪しいもんだ。ま、欲しければひとりで行け」 「祭りにひとりで行くヤツなんかいねぇよ。つまんねぇじゃねぇか」 「ひとりがイヤなら、誰か他を誘え。お前なら、喜んでついて行くヤツは、いくらでもいるだろう」 「いーやーだーっ! 俺はお前と行きたいんだっ! ふたりの思い出を作るんだ!」 「高校生になっても、まだガキだな。哲ちゃん」 「うるせぇよっ! 俺はお前と行くんだ! ふたりで一緒に行くんだ!」 「お手てつないで、屋台の練り歩きをする歳でもないだろう」 「別に手はつながねぇけどよ。いーじゃねぇか、行こうぜ。本なんかいつだって読めんだろ」 「人ごみは嫌いだ。行くならさっさと行け。帰りにコーヒーを買ってこい」 「ダーメーだっ! 俺はお前と一緒に行くって決めてンだ!」 「・・・いまさら言うのも馬鹿らしいが、強引だな」 「なんでもいいから、準備しろって! ぜってぇお前と行くからな!」 「……そんなに、俺と一緒にいきたいのか?」 「おうっ! 啓太に肉ひとくちもらったんだけどよ、柔らかくて、すっげぇウマかったんだぜぇ! ヒデにも食わせてやりてぇよ。だから一一」 「クッ……」 「な・・・なんだよ……ヒデ・・・」 「……スケベ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一一なっ!?」 「そうか、そんなに『俺と一緒にイきたかった』のか。分かった。考慮しておこう」 「ひ、ひでっ……なに……おまっ……!?」 「そういった方面にはうといと思っていたが……案外お前も好きモノだな、丹羽……」 「ち、ちがっ……なに……ばかやろっ……こら、脱いでんじゃねぇっ……!」 「大丈夫だ……有能な副会長に、全部まかせておけ……ちゃんと哲ちゃんが我慢できるよう、『しっかり』握っててやるよ……」 「ち……ちっがあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっう!!」 「今夜の俺は、すこぶる機嫌が悪い……すぐラクにしてもらえると思うなよ……?」 「ななな、なんだよヒデ……! さっきから、なに怒ってンだよ……!?」 「俺が『クる』まで……絶・対一一イかせてやらないからな……」 「じょ、冗談じゃねぇっ! お、お前……本っっっっっっ気で、長いじゃねぇかっ……!」 「祭り以上に、たっぷりと楽しませてやるよ……さぁ、覚悟しろ・・・一一丹羽」 「た……ただい……ま……」 「・・・・・・」 「わ……悪ぃ、ヒデ……もーちっと、早く来ようかと思ってたんだが……つい、ウトウトしちまって・・・」 「・・・・・・」 「あ、あの……ヒデ……?」 「・・・・・・」 「なぁ……なんとか言えって」 「・・・・・・」 「なぁ、ってばー」 「……おかえりなさいませ、哲也さま」 「……は?」 「お風呂になさいますか?」 「あ、あの……ヒデ?」 「それともご飯ですか?」 「もしかして……とてつもなく、怒っ……てらっしゃいマス……?」 「『お仕置き』ですね? かしこまりました……」 「たぁっ!? ちょっ、ちょっとお待ちになって……!」 「……どうかなさいましたか?」 「チッ……お前が変な話し方するから、俺までおかしく……」 「……さぁ、お召し物をこの机に・・・」 「なっ……こ、こら! 脱がせるなっ!」 「休憩は十五分とお伝えしましたのに、一時間もお戻りになられないので……わたくし、とても心配しておりました……」 「そ、それは……申し訳ごごごございませんで……」 「もしやあなたさまの身に、なにか危険がせまっていたのでは、と……」 「むしろ……いま現在が、とっても危険です……」 「ヒデ……お前は……生徒会・副会長だな……」 「なにをいまさら」 「いつも俺の片腕として、サポートしてくれる……」 「ああ。お前になら、俺の全力をかけて協力してやってもいいと思ったからな」 「俺も……最高の相棒だって思ってる……」 「それはそれは。補佐官・冥利につきるな」 「だからって・・・」 「なんだ」 「こ……『こんなコト』までサポートしなくていいーっ!」 「遠慮するな」 「してねぇっ! 夜這いすんな!」 「ココをこんなにヒクつかせて一一」 「うあっ・・・」 「説得力がないぞ。哲ちゃん」 「ひ……ヒデっ……」 「生徒会長の欲求不満・解消も、副会長の仕事だ」 「ンな仕事してる副会長が、どの学校にいるーっ!」 「どこにでもいるだろう」 「いてたまるか!」 「さぁ、夜の奉仕活動だ」 「たまには『夜は寝る』という当たり前の行動をしろ!」 「誘惑したのはお前だろう」 「してねぇ! ネクタイをほどけーっ!」 「とっくにほどいているだろう」 「分かってンだろうが! 手首の、だ!」 「ロープの方がいいのか? だが、あとがつくぞ」 「論点がちがーうっ!」 「おはようございます、中嶋さん」 「ああ、おはよう、忠犬」 「今日はこんなにも天気がいいのに、空気がすこぶる悪く感じます。なぜなんでしょうね」 「それは奇遇だな。実は俺もさっきから、あまりの気分の悪さとめまいに、吐き気をもよおしそうだ」 「おや、それは大変。早く医務室へ行かれてはどうでしょう?」 「その必要はない。この気分の悪さは、お前が目の前から消えてくれれば、すぐにでも治るからな」 「なんでしたら今日一日、自室でお休みになられたらどうですか。あなたの悪人顔に怯える生徒も多いですから、そうして頂けるとみなさんも喜びます」 「俺もたまにはゆっくりしたいものだが、女王様にくっついていればいいだけのヒマな犬と違って、生徒会は今日も忙しい」 「それはそれは。生徒会長が怠慢だと、毎日充実した日々が過ごせますね。もっとも、ソレがうらやましいとは微塵も思いませんが」 「臣……」 「はい、郁」 「丹羽がマジメにしていたところで、忙しいのに変わりはないさ。こっちは二人で、会計以外の全てをこなしているんだからな。俺よりお前の腹黒顔の方が、よほどタチが悪いんじゃないか? 女王様以外の人間を全て『カボチャ』扱いしている、うさんくさい笑顔もどきが」 「心外ですね。僕にとって郁は、特別であると言うだけです。あなたこそ、ご自分にメリットのない人間なんて目に入らないんでしょう? それに、あなたをカボチャ扱いなんてしませんよ。そんなの、カボチャに失礼です」 「アタマの中味はカボチャどころか、ピーマンのように空っぽのお前と同類にするのも、はなはだ失礼だと思うがな」 「あなたの悪人声で『カボチャ』だの『ピーマン』だの言われる野菜たちが、不憫でなりませんよ。そのたびにおいしさが損なわれそうで、ね。カボチャもさめざめとしている事でしょう」 「ほう、それはそれは。野菜に感情があったとは知らなかったな。では噛み砕いて食べると、カボチャが『痛い』とでも言うのか? さすが、オカルトオタク。考え方もミステリアスで素晴らしい」 「んー、どーした? 今日の朝メシはカボチャなのか? よう、ヒデ! なんだお前、まぁた『郁ちゃんのペット』くんとケンカしてンのか?」 「俺じゃない。向こうから仕掛けてきたんだ」 「丹羽会長、その呼び方は……」 「ペットくんがいるって事は……お、いたいた! おーい、郁ちゃーん!」 「……丹羽、朝からうるさい」 「んー、けだるげな所がまぁた色っぽいねぇ。あー、郁ちゃんが女の子だったらなぁー。あの美貌、たまんないよなぁー」 「丹羽会長。郁をそうやって女性扱いするから、嫌がられてしまうのですよ」 「つったってよー、郁ちゃん美人だしなぁー」 「丹羽、『郁ちゃん』はよせ……。臣も遊んでないで早く来い」 「はい、郁」 「そうだ。カボチャはさっさと退場しろ」 「おい、ヒデ……」 「……なんだ、丹羽?」 「い、いや、その……ほどほどに、な・・・」 「フン」 「では失礼します、丹羽会長」 「お、おう……」 「一一お大事に、中嶋さん」 「ああ。ご学友の『にんじん』によろしくな」 「あいにく、にんじんもりんごもタマネギも、あなたをよくは思っていないそうですよ」 「カレーライス・ファミリーに嫌われた所で、俺にはなんの障害もないさ」 「一一臣」 「はい。いま行きます、郁」 「ヒデ・・・」 「苦情なら犬に言え」 「おかずにカボチャなんてねぇじゃねぇか」 「目玉焼きで我慢しろ」 「……だー、疲れたぁー・・・」 「少し休むか」 「おうっ。ンじゃ、外に一一」 「外出は禁止だ。室内で休め」 「……ちぇっ」 「代わりにコーヒーでもいれてやる」 「ん、さんきゅ」 「ああ、俺はなんて優しい副会長だろう」 「ははっ、自分で言うなって」 「外に行っても、どうせ雨だぞ」 「げ、マジかよ……全然、気付かなかったぜ」 「普段からそれだけ集中して頂けると、あくどい参謀にして策略家の補佐官としては、とてもありがたいのですがね」 「だから、自分であくどいとか言うなって。それにお前の敬語、すっげぇブキミだ」 「クッ……そうか」 「その笑い方もやめろって……」 「はいはい。ほら、飲め」 「あちっ……」 「こぼすなよ、哲ちゃん」 「ついでに『ちゃん』付けもよせ」 「そうか? 俺はワリと気に入っているんだがな」 「それなら俺もコレから『ひーちゃん』って呼ぶぞ?」 「ふぅん。哲ちゃんにひーちゃんか」 「なんか、幼なじみみたいだな」 「むしろ、バカップルだ」 「んぐっ……げほっ……!」 「書類をコーヒーで汚すなよ」 「げほっ・・・一一るっせ! お前が妙な……ごほっ」 「大丈夫か、哲ちゃん」 「だから『ちゃん』は……げほっ」 「お前だって女王様を『ちゃん』付けで呼んでいるじゃないか」 「郁ちゃんはいいんだよ。だって、美人だしなぁー」 「お前は保護者が必要な精神年齢だからな。そっちの意味で『ちゃん』付けだ」 「ったく、俺みたいなデカい図体つかまえでガキ扱いすんの、お前ぐらいだぜ?」 「……本当にそうか?」 「……なんだよ、そのイヤーな感じの笑顔は・・・」 「さぁてね」 「うっわ、かわいくねぇー」 「お前はいままで、俺を一瞬でも『かわいい』と思った事があるのか?」 「ねぇな」 「即答か」 「仕方ねぇだろ。だって、ヒデだし」 「せめて過去をふりかえるフリぐらいしろ」 「んー・・・一一あ、あった」 「あったのか?」 「おうっ。去年の女装一一」 「一一丹羽」 「ジョーダンだって、英子ちゃん一一いってぇーっ!」 「……蹴るぞ?」 「もう蹴ってるじゃねぇかっ! うわ、危ねっ……なにしやがる、鬼畜メガネ!」 「じっとしていろ」 「誰がじっとするか! おい、こらっ、書類が散らばるって……うわっ!」 「お前が大人しく蹴られれば、書類が被害にあわなくて済むぞ」 「なんで俺が身をていしてまで、書類なんかをまもらなきゃいけねぇんだ!」 「『王様』が書類のひとつもまもれないでどうする」 「なにワケの分かんねぇコト一一どわっ! おいこらっ、危ねぇだろ!」 「あたりまえだ。お前に向かって蹴りを入れているんだからな」 「だから、悪かったって! ンなせまいトコで暴れんじゃねぇ!」 「部屋そのものはせまくはない。棚と机が多いから、せまく感じるだけだ」 「そういうコトを……だぁっ! この、いい加減にしろっ!」 「逃げるのがうまくなったじゃないか、哲ちゃん」 「ざけんな、コラ!」 「いつも生徒会の仕事をサボってばかりで、たまに手伝えば俺を怒らせて。お前、なにさまのつもりだ」 「王様」 「歯を食いしばれ」 「ほわっ!?」 「フッ、惜しいな……もう少しだったのに」 「てんめ……人がせっかく下手にでてりゃ、調子にのりやがって……!」 「お前がいつ、下手に出た」 「軽い冗談にいちいちムキになるんじゃねぇ!」 「お前の冗談はタチが悪すぎる。クチばかりじゃなく手も動かせ。無能なサボリ会長」 「こんの陰険メガネ……! ぶちのめしてやる! 外へ出ろ!」 「俺がそんな挑発にいちいちのるとでも思ってるのか? それに見ての通り、外は大雨だ。風邪をひくぞ」 「るせぇっ! つべこべ言わずに俺と勝負しろっ!」 「ふぅ……分かったよ、哲ちゃん。全く、仕方のないヤツだ一一」 「一一なっ・・・なんだよ……ネクタイなんかほどいて……」 「どうした?」 「どうって……」 「勝負、したいんだろう?」 「そ、ソレは……あっ・・・」 「ほぉら……もう逃げなくていいのか?」 「なっ……なん・・・だよ……」 「・・・クッ……」 「ひ……ヒデ・・・? お前、いったい……なにを……」 「お望みどおり、勝負してやろうじゃないか。一一俺のやり方で」
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