異世界トリップ





「大丈夫、すぐ戻るから」

「あなた……さっきの・・・」

「君を迎えにきたんだよ、姫」

「あの子をおもちゃにするな」

「じゃあ、学校いってきます!」

「……妙なネコを拾ってしまった」

「はは……まるで宝くじ並みの確率・・・」

「怪しい娘……ここでなにをしている……?」

「あれ……さっきまで通学路を歩いてたはず……」

「どうした。こちらの食事はクチに合わんかね?」

「を・・・をぅっ!? ネコが人に・・・変身した……」

「だ、誰か……コレは夢だと言ってえぇぇぇぇぇぇぇーっ!」

「あ、あの……き・・・気をつけて……いってらっしゃい……」

「あなたも……魔法使いなの? まさか……ここにいる、全員が?」

「ああ、あの子なら……出ていったよ。『家に帰りたい』って、泣いてた」

「……お前は・・・なにかを、知っているな……とても重大な、なにかを一一」

「本の外の世界から来たんだってよ。じゃあ俺らは、本の中に住んでんのか?」

「あのコ、昨日もいたよな……もしかして、家出か? なんかおもしろそうだな。おい、声かけてみろよ」

「魔法? ああ、もちろん使えるよ。一一まさか、君……魔法、使えない……なんてコトは……ないよね?」

「君はさっき『平凡な毎日に飽き飽きしている』と、言ったね? だから、刺激をプレゼントしに来たんだよ」

「むむ……なかなか好みのオジサマ発見……眼福、眼福……を・・・近づいてくる・・・一一へ? あ、あわあわ、泡……わ、私?」

「んー、困ったなぁ。僕らの移動手段は、ほうきがメインなんだよね。どうしても飛べない? じゃああとは・・・暖炉か、ポートキーか、最悪、電車とか……」

「むぅ……うー・・・へくちっ。さむさむさむ……ココはどこでおじゃるか……余は暖かなおコタで、ぬくぬくコーンポタージュをすすりたいぞえ……へくちっ」

「あなた、私の好きな小説の登場人物と、同じ名前なのね。外見も性格も、描写にそっくり。こんなに似てる人に出会えるなんて、驚いたわ。友達に自慢しなきゃ」

「足が……痛い・・・私こんなワケの分からない所で、短かった乙女の青春を終えてしまうのかしら……ううっ、ココはどこぉーっ!? せめて会話ぐらいさせてぇーっ!」

「コレは『携帯電話』というのよ。コレは『電子手帳』。ほら、こうやってボタンを押すと・・・あれ……動かない……。ケータイが通話中なのは分かるけど、なんで手帳まで……?」

「私は……この話を知ってる……そして、この先……どうなるのかも・・・。誰かに話してはいけない……ストーリーを変えてはいけない……たとえその結果、あの人が命を脅かす事になっても、私は・・・」

「ここは楽しい……まもってくれて、大切にしてもらって、友達もできて、やりたい事も、たくさんある……いま私は、とても幸せ……でも、ここは私のいるべき場所じゃない……イヤ、帰りたくない・・・」

「住むって……まさか、この廃虚に? あ……え、え・・・ええっ!? し・・・城に……なった・・・なんで!? さっきまで幽霊でもでそうな、ボロっちい廃虚だったのに……うわ……中もまた、壮大でゴージャス・・・」

「私は知る……明らかに、ココは日本ではないということを……そして、もうひとつ……逃れるすべがない、危機的な状況一一いわゆる『絶体絶命』という状況下におかれている、ということを……。をぅ、ぴーんち。ジジツはショウセツよりキなり。誰か、へるーぷ。へるぷみぃー」

「・・・が……が異国人……もとい、外国人っ……! お……おー・・・あいむ・そーりー、ヒゲそーりー、掘ったイモいじるなぁー、ないすとぅーみーちゅー、内密ー、内密ー、でぃす・いず・あ・ペーン、あいむ・どんと・すぴいく・いんぐりっしゅ、しゃーろっく・ほーむず、こなん・どいる、あがさ・くりすてぃー、えーびーすぃーさつじんじけーん、あーゆーおーけい?」

「俺には、とんでもねぇ障害がある。自分の思考が、ある特定の相手に筒抜けになっちまう。しかもこの障害を持つヤツは、例外なく、飛び抜けて魔力が高いらしい。だからお上は俺を、『道具』として……魔法界の財産として見る。いつも誰かに監視される。一一ソレにうんざりしてな。目を盗んで逃げてきた所を、お前に見っかったっつーワケよ。ところで、お前さんもどーやらワケありのようじゃねぇか。ここはひとつ、取り引きといこうか一一」

「では……なにから教えるべき、か。まず・・・私は、君の世話をするよう命じられた、この学校のクスリの先生だ。君のように魔法の使えないものは、本来、ここにいさせる事はできない。校長のご好意で、いまだけ特別に、例外が認められたのだ。あとで礼を言いに行く事。ここを出ていく場合、ここで知り合った人物、話した内容、起こった出来事など全ての記憶を、君から消させてもらう。我々の世界の秘密は厳守、これは法律でも決まっている。魔法省には、まだ許可を申請していない。もし滞在に許可が下りない場合、出ていってもらう事も考えて頂かねばならん。もちろん、そのまま放り出すような事はせん。その時は、君がこちらの世界で生活できるよう、なにか考える。一一さて、なにか質問は?」


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