会話
 


コンテンツ





「いいか、問題だすぞー」
「イエス・サー!」
「一九四九年、共産主義勢力に対抗する目的で、アメリカ・カナダ・西ヨーロッパ諸国が結成した『集団安全保障機構』を、アルファベット四文字でなんと略されるか、答えよ」
「煮た大豆に納豆菌を繁殖させて作る、粘質の糸を引く食品!」
「それは納豆」
「洋菓子、特に卵・牛乳を主体とした生菓子! フランス語で一一」
「ガトーだろ、そりゃ」
「ボルトのねじ!」
「ナットだ」
「ショ糖を主成分とする、代表的・甘味調味料!」
「砂糖」
「料金をとって一般の人を入浴させる浴場!」
「銭湯」
「一本の糸をからみ合わせて作った布!」
「ニット」
「一定区域内に散在する、二つ以上の島の集まり!」
「諸島」
「ボールを取るために手にはめる、革の道具!」
「ミット」
「乗馬のズボン!」
「キュロット」
「アンティーク!」
「骨董」
「切るコト!」
「カット」
「ヒロシ!」
「ホスト」
「三丁目の!」
「加藤」
「一一さんが飼ってる!」
「シェリー」
「素晴らしいっ! 全問正解!」
「……問題だしてたのは俺じゃなかったのか?」

「……次の問題いくぞー・・・」
「イエス・サー!」
「Super スーパー Urban アーバン Intelligent インテリジェント CArd カードを略した、非・接触方『ICカード』を、アルファベット五文字でなんというか、答えよ」
「夏に黄色の花をつける! 果皮はみどりで黒い縦のしまがあり、赤ないし黄色の甘い果肉に黒いタネ!」
「それはスイカだ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あってるじゃない」
「なんだ……この、妙な敗北感は……」

「じゃあ、次は私から問題をだしてあげよう!」
「……マトモなのを頼みます」
「だーいじょーうぶ! ちゃんと試験にでそうな、マトモな問題デース!」
「……まずお前がマトモな日本語を話せ。じゃあ、まぁ……始めてくれ」
「致死量、ニミリグラム、トリカブトの根に含まれる、体内に入ると数分で命を落とす強力な毒物の名前は、なんでしょーう?」
「一一答えは“アコニチン”ですが……その前にまず、どの学校のマトモな試験問題なのか聞いてもよろしいでしょうか?」

「はっはっは! 私は遠い宇宙から来たナゾの生命体・Aだ!」
「・・・・・・。一一ようこそ、地球へ」
「驚くだろうが……えー、ソコで私は足を肩はばに開き、座っている彼に『ずびしっ!』と、ひとさし指を向け、こう叫ぶ……『実は君は一一魔法使いだったのだ!』」
「知ってます」
「ぬぅ!」
「厳密に言うなら魔導士ですが」
「こ、コラ! 私がそう言ったら、君は驚かねばならんのだ!」
「わぁー、びっくりしたぁー」
「棒読みではないかっ!」
「演劇はした事がないので」
「な、なんたること……! この台本と違うではないか!」
「台本の内容は変更される事が多いですからね」
「ま、まぁ……気にしない事にする! コレから言う事を、耳の穴かっぽじってよーく聞くように!」
「では耳の穴をかっぽじるタメに耳かきを……」
「探さなくていい! ソコに座りたまえ!」
「初めから座ってます」
「ぬぅ!」
「とりあえず、ポテチでもいかがですか?」
「勤務中につき、遠慮する! さて! 君にはコレから、重大な使命を与える!」
「拒否します」
「ぬぅ!」
「私たちはいいコンビになれそうですね」
「漫才をしに来たワケではないっ!」
「あれ、あなたはお笑い芸人ではなかったんですか?」
「ぬぅ!?」

「なー、このウーロン茶、君のだろ? 飲んでいい?」
「あー、別にいいけど……俺がクチつけて飲んでるヤツだぜ?」
「へーきへーき。狙いは間接ちゅーだから」
「返せ」
「んじゃ代わりに、君のパンツちょーだい」
「ンなモン、どーする」
「かぶる」
「待て」
「さてと……進路希望どうしようなぁー。医療系いきたいなー」
「悩む前にまず、アタマにかぶってる俺のパンツを返せ」
「ヤだ」
「返せ」
「ホントは君がいまはいてる『使用済みパンツ』が欲しいのを、僕もガマンしてやってんだぞ。だから君もガマンしろ」
「どぉいう理屈だ。さっさと返せ」
「ヤだ」
「返せ」
「受験のおまもりにする」
「おまもりは神社で買え」
「神社は銀行強盗をして、いま指名手配中」
「銀行強盗の方がまだマシに感じるのは、なにゆえか」
「パンツをかぶる男か、銀行強盗か。いまのお気持ちは、どっち?」
「料理ショーか」
「パンツは食べ物じゃないよ」
「五才の子供でも知ってるコトを、どうもありがとう」
「さて、進路希望は……っと」
「だから、パンツ」
「パンツなんて学校はないだろ」
「あってたまるか」
「君はドコにする?」
「パンツ」
「そんなにパンツが好きか」
「ソレはお前だ」
「パンツフェスティバル・パンツカーニバル」
「ヘンタイ祭りだな」
「パンツ同好会」
「イヤな会をつくるな」
「ノーマルパンツから、勝負パンツまで、はばひろくご用意」
「もういっそハダカでいろ」
「いやん、目で犯されるぅ」
「むしろ見たら石になる」
「君が石像になったら、動けないのをいいコトに・・・あわよくば……むふ」
「お前が石像になったら、とりあえず壊す」
「覚えておけ、勇者よ……たとえ我を封印しても……人間に欲がある限り……必ず、復活する・・・」
「じゃあ、復活しても動けねぇよう、つけもの石でものせとくわ。『変態退散』のお札もつけて」
「いやぁん、このお札をとってぇーん」
「よく効くな、この札。とりあえず返せ、パンツ」
「お札をとってぇーん」
「動くな、椅子」

「一一おいで・・・」
「うあぁぁぁぁぁぁっ……! 声が……声がエロい……」
「ほら……早く……」
「もう、しゃべるなー! 重低音・セクシーバリトンボイスで誘惑するなーっ」
「……ほう……そんなに、私の声が好きか・・・一一」
「はぅ……こ、声だけでホレそうになるなんて・・・」
「一一キスしろ……」
「はぅっ……」
「唇で、私を誘惑してみろ……」
「や、やめれ……しゃべるな……」
「舌をからめた、濃厚なキスの愛撫で……」
「そ……その声は、犯罪っ……」
「一一・・・抱かせろ……」
「・・・は、はぅっ! だ、誰かーっ、エロ声に犯されるーっ」
「その白い柔肌を、淫らな快楽に溺れさせ・・・一晩中、妖艶に踊らせてやる……」
「こ、こらっ……ボタンに手をかけないっ……!」
「宙にのばされた手は虚しく、くうを切った……ベッドに横たわる小柄な肢体は、淫らに仰け反り、身悶える……。薄暗い部屋に響くのは……卑猥な嬌声と、ベッドのきしむ音……そして、理性を誘惑する……妖しい水音・・・」
「ソコ! そのエロボイスで、官能小説みたいな言い方をしない!」
「酒のせいか、別の理由か……。火照った顔を向けた女は、悦びに濡れた恍惚な瞳で、本能の扉をノックする……。男は熱い吐息をはき、嗜虐心に満ちた笑みで、酒をひとくち含むと……禁断の果肉へ、淫靡な舌を一一」
「こらこらこらこら、こらーっ! ソコから先は、放送禁止! ピー!!」
「お前は月光のような……神秘的な香りを漂わせる……陶器のような肌は……滑らかで、心地いい……」
「はぅっ・・・今度は耳元でロマンティックな……愛のささやき……」
「ずっと、そばにいてくれるだろう……? 月のように、夜だけではなく……永遠に、私のそばに……」
「今後、エロ声は……半径一メートル以内……た……立ち入り禁止に・・・」
「お前がハタチになる、今夜……この言葉を……」
「わ、私を誘惑してどう……・・・」
「……愛している・・・一一」
「一一・・・はぅ……」
「……と言うわけでベッドで出し入れギシギシ禁断の果肉へくすぶる熱を」
「こらこら、こらっー!」
「……今夜はペンがいいか? 筆か? アイスか? 十字架か?」
「なんの話だーっ!!」

「……さぁて・・・どうして欲しい?」
「分かってる……クセに……こ、この・・・一一鬼畜教師っ……!」
「ひどいなぁ、腹黒教師と言ってよ」
「た……たいして、変わら……・・・一一っ・・・」
「ほら、そんなに大きな声したら、聞こえちゃうよ?」
「さっきは……声、だせって……言った……っ・・・一一」
「口答えばかりする、悪いコは・・・」
「な……なにを企んでいる……!」
「んー? コ・レ」
「待一一」
「一一たない」
「・・・一一っ! へ、変態……教師……っ」
「マゾ生徒」
「……っ!」
「淫乱生徒」
「……っ!!」
「色情狂め。お前にピッタリの調教をしてやる」
「せ・・・一一せんせぇっ!? キャラ変わってマスっ!」

「漫才コンビとか言われんのも、もー慣れたな」
「僕らは普通に会話してるだけなのにねぇ」
「お前がボケで、俺がツッコミってトコ?」
「夜は逆だけど一一むぐっ」

「一一っ……」
「……どうした? 私はただ、お前の名を呼んだだけだぞ……」
「せ……先生・・・? どう……したんですか……」
「……お前は、悪いコだ・・・」
「せ……んせ・・・?」
「消灯の時間をまもらず……フラフラと出歩いたりして……」
「で、でも、ほんの十分一一」
「言い訳か。やはりお前には、お仕置きが必要だな」
「お、お仕置きって……なにを……」
「・・・一一生徒と教師が夜中に、教師の部屋でふたりきりでいるんだ……そんな状況でする『お仕置き』と言えば・・・」
「一一っ……!」
「・・・一一ひとつしかないだろう……?」
「一一きょ、教師が生徒に……そんないやらしいコトして、いいんですか……!?」
「なんのコトだ?」
「なに……って……」
「私はただ、部屋の掃除でもしていただこうかと思っただけだが……?」
「っ・・・!」
「お前は……いやらしいコだったんだな・・・」
「一一ち、違っ・・・」
「ほんとうに・・・一一悪いコだ・・・」
「せ……せんせ……」
「怖いか?」
「え・・・」
「私が、こわいか?」
「だ……誰が……!」
「ふぅん?」
「っ……!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「一一あ……あの・・・」
「どうした?」
「どうって……し・・・一一しない……ん……ですか・・・?」
「なにを?」
「・・・一一っ!」
「お前はなにか、期待しているのか?」
「一一・・・っ」
「なぜ、なにも言わない……?」
「…………・・・」
「なら、代わりに答えてやろうか……」
「せんせ……」
「お前の、期待している事は……」
「ち……ちがっ……」
「これから、どう、抱いてくれるのか……」
「っ……」
「気持ちよくして、くれるのか……」
「あ……あなたは・・・」
「この人は、クスリの先生だから……いやらしいクスリを使って、興奮させてくれるのか……」
「や……やめ・・・」
「ちゃんと最後まで・・・一一イかせて、くれるのか……」
「一一っ・・・一一!」
「……どうした、寒いのか……?」
「・・・っ……」
「一一それとも……」
「ち……違う……」
「こんな事を、私に耳元でささやかれて一一」
「……ちが……う・・・」
「一一・・・感じたか……?」
「・・・・・・っ一一」
「いい、カオだ……お前は正直だな・・・」
「一一どうして……どうして……こんなコト……するんですか・・・」
「言っただろう? お仕置きだと」
「だ、だからって、こんな……」
「なら一一」
「え・・・一一んっ……」
「なぜ、大声をだして逃げない……?」
「ん……んくっ……」
「……消灯とは言え、まだ起きている生徒も多いだろう……」
「ふ……あっ……」
「教師も、寮にいる……」
「せ……せんせ……っん……」
「大声をだせば、みんなココに集まってくれるぞ……」
「……っ・・・」
「お前がソレをしないのは……期待しているからだ・・・」
「そんな……こと……」
「私に、コレから一一・・・されるコトを……」
「違う……」
「なにが違う。実際お前は、私に胸や太ももをまさぐられても……」
「んっ……んく……っ・・・」
「一一部屋から逃げるどころか、抵抗すらしないじゃないか……」
「そ、それは……」
「なんだ?」
「・・・私を……どうする気ですか・・・一一」
「さぁてね?」
「っ・・・一一!」
「なにか、シて欲しいのか?」
「一一・・・っ」
「勉強をみてやろうか? それとも、授業に役にたつ参考書でも、教えて欲しいのか?」
「・・・っ一一」
「なんとか言ったらどうだ?」
「……せんせ・・・」
「なんだ」
「キス……して下さい・・・」
「一一・・・・・・」
「せ……先生……」
「一一なぜ?」
「そ……それは・・・」
「それは?」
「一一・・・……好き……です・・・先生……」
「・・・・・・」
「・・・・・・っ……」
「……フン」
「せん……せ……」
「一一やっと言ったな」
「え……」
「一一いままで私が、どれだけ我慢していたか……分かるか?」
「え、あっ……!」
「さて、始めようか……寝室でたっぷりと一一」
「お、おろして下さい、先生っ……!」
「さんざん焦らされてきた仕返しに、濃厚な『お仕置き』を・・・一一」

「一一お前はなぜ、俺の目を見て話さない?」
「え……」
「言われたことはないか? 話をする時は、相手の目を見ろと」
「それは……分かってます……」
「では、なぜ?」
「その……あなたの目を見ていると……なんだか、緊張して・・・」
「緊張……?」
「なんて言うか……ウソをついても、見抜かれると言うか……見透かされる……と言うか……」
「お前は俺に、なにかウソをつこうとしているのか?」
「そういうワケじゃありません!」
「だろうな。お前ほどバカ正直なヤツは、いままで見た事がない」
「ば、バカって・・・」
「すねるな」
「すねてません!」
「お前は本当におもしろいな」
「……俺・・・もしかして、からかわれてます?」
「さぁてね?」
「っ……!」
「すねるな」
「だから、すねてませんってば!」
「からかっているのではない。お前で遊んでいるだけだ」
「それを『からかう』って言うんです!」
「いちいちそうやってムキになるから、俺に遊ばれるんだよ」
「あのですね……!」
「はいはい」
「ああ、もぉっ……!」
「一一それで?」
「え?」
「なぜ、俺の目を見て話さない。なにか理由があるようだが?」
「それは……だから・・・あの……」
「なんだ?」
「目を見ると……緊張して……」
「さっきも聞いたな。それだけか?」
「そ、その……」
「俺が上級生だから、怖いのか? 気後れでもしているのか?」
「別に、そういう……ワケじゃ・・・」
「……当ててやろうか?」
「え……」
「こうして……」
「あ、あの……」
「俺に、見られると……」
「そんな・・・間近で・・・一一」
「動けなくなる……」
「そ……そんな……こと……」
「まともに、考えられなくなる……」
「あ……あの・・・一一」
「……どうした・・・顔が赤いぞ……?」
「……っ」
「顔をあげろ・・・俺の目でだけなく、顔も見れないのか……?」
「やめて……下さい……」
「……なにを?」
「・・・っ」
「……俺は、なにも、していないぞ……」
「……っく・・・」
「お前は、俺の目に緊張するワケじゃない……」
「え……?」
「俺の視線を意識すると、感じてしまう……だから、俺と目をあわせる事ができない……」
「そんな……そんな……こと……」
「……違うのか?」
「・・・っ一一!」
「ではなぜ、俺に見られているだけで……そんなに赤い顔をしているんだ……?」
「それは……・・・」
「顔をあげろ……」
「……・・・っ」
「おや? 心臓の動きが早くなったな……顔も火照って……」
「や……め……」
「吐息が熱い……身体が震えている……」
「っ・・・一一」
「お前は、本当に……かわいいな・・・一一」
「や……やめ……くだ・・・い……」
「一一その気があるなら、今夜十時……俺の部屋に来い」
「え……あ、あの・・・っ」
「カギをあけて、待っている」
「俺……い、行きませんからね!」
「ふぅん?」
「っ……!」
「一一コーヒー代は俺がおごる。じゃあな」
「あっ……」
「忘れるな。十時に俺の部屋だ」
「ちょっ、ちょっと……行っちゃった・・・一一はぁ・・・ど……どう……しよう・・・一一」

「ぬあう……」
「なんだ、若い者がだらしのない。シャキっとしたまえ」
「……誰のせいだ、誰の・・・」
「大げさな。たかが三回ぐらいで」
「『たかが』でもないし、『三回』でもない・・・」
「もの足りないか?」
「……黙れ、エロうさぎ・・・一一あ……ふ……」
「……うさぎ?」
「う……うさぎは……年中……発情期……あっ・・・」
「・・・ほう、つまり一一」
「んっ……・・・んっ……っ……んうっ・・・」
「年中」
「ひうっ……」
「こういうコトを」
「・・・ん……くっ……」
「シて欲しいと?」
「ち……違っ・・・んっ……」
「遠回しに誘っているのか。そうかそうか」
「こ、この……うさぎ教師っ……あっ、あうっ・・・!」

「今日から一週間、『禁欲日』!」
「ほう」
「身体に触れるのは、なし! ちゅーも、ぎゅーも、え……エッチもなし!」
「ほう」
「聞いているのか! ソコの、うさぎ教師!」
「……そんなコトを、私がまもるとでも?」
「うっ。ま、まもれ!」
「この私に命令か……いい度胸だ・・・」
「きゃーっ、きゃーっ!」
「……まぁ、よかろう」
「きゃ・・・へ?」
「一週間、だな」
「ほ、ほえ・・・」
「クスリも羽もこおりも脱衣も泡風呂も酒も緊縛も玩具も目隠しも言葉攻めも放置も屋外も露出もプールも証明写真も図書館もビデオもカメラも羞恥も陵辱もボンデージも異物も監禁も下着も挿入も木馬もガーターベルトもお仕置きも生着替えも焦らしも首輪も手錠もリードも、ナシと」
「あうあうあうあう……」
「代わりに、私からも君に課題をだしてやろう」
「・・・う?」
「早朝、鍵をかけずに寮のトイレに入り、ヌードになって、自分で自分をシろ」
「は・・・一一はぅっ!?」
「もちろん、達するまでだ。コレを一週間」
「はぅはぅはぅっ!?」
「できんのなら、『禁欲日』とかいうのもナシだ」
「な……な、な、な、な、な・・・一一はぅっ!」
「……私に勝てると思うなよ」

「起きろ……」
「ん……何時……?」
「十時だ」
「あと一時間……」
「……襲うぞ?」
「ん……・・・・・・・・・・・・一一ええっ!?」
「起きたか。つまらん」
「あ、あの、あの、あの、あのっ」
「おはよう……というには少し遅いか」
「え、ええ? なんで……ここ……」
「お前の部屋だ」
「で……すよね……な、なんでここに一一」
「一一俺がいるのか?」
「は……はい……」
「起こしに来た」
「え……」
「不満か?」
「え、えーと・・・」
「では、襲いに来た」
「ええっ!? なななななな・・・」
「パジャマのボタンが外れ、白い胸元がよく見える……」
「うわわわわっ!?」
「冗談だ」
「へ・・・って……な、なんなんですかっ!」
「だから、言っただろう。起こしに来た」
「お……起こしに……」
「五つ数えるうちに着替えろ。できなければ、襲う」
「そ、そんな無茶一一」
「ひとーつ」
「うわわわわわわわわ!」
「お前の背中は、下から上になぞりたくなる……」
「み、見ないで下さいよっ!」
「ふたーつ」
「だあぁぁぁぁっ!」
「目が濡れているぞ……いやらしい夢でも見たのか?」
「目は正常です! テキトーなコト言わないで下さいっ!」
「嬉しいクセに。みーっつ」
「ああああああああっ!」
「俺に見られながらの着替えは、興奮するか?」
「真っ昼間から、なに言ってるんですか!」
「お前の下腹部は欲情しているようだが」
「そんなコトありませんっ」
「嘘つきめ」
「う、うそじゃないっ!」
「まーだか?」
「もうちょっと……ベルトの穴が……」
「違う穴に入れてやろうか」
「やめて下さいってば!」
「よーっつ。早くしろ、日が暮れる」
「暮れるまで七時間あります!」
「ぐだぐだ言ってないで、動け。いつー・・・」
「はははははいっ、お、お、終わりました!」
「ご苦労」
「ふぅ・・・一一」
「残念だ」
「なんですかっ!」
「はいはい。ほら、行くぞ」
「い……行くって、どこに……」
「日曜の昼にふたりで出かけると言えば、デートだろう」
「でっ・・・一一」
「なにをしている。おいて行くぞ」
「あ、ちょっ……待って下さいよーっ!」


Top ▲
BACK
HOME