「一一やめるしかない」
「おい……見たか、あのキズ・・・」
「アイツ……毎月、毎月、どこに行くんだ……?」
「これからも僕と……友達でいてくれるの……?」
「心配性だな……大丈夫、誰も聞いてないよ・・・」
「許せなかったんだよ……俺らのジャマする、アイツが……」
「ランプの火を消せ! ここに誰かいるってバレちまうだろ!」
「ケガの治療ぐらい自分でできるから……放っておいてくれないか」
「一一じゃ、今夜もいつもの場所で。くれぐれも見つかるなよ……」
「一一あのバカっ……! 余計なコトするなって、あれほど……!」
「よせ、やめるんだ、シリウス……落ち着け・・・僕が、話すから……」
「……お前、いい加減にしろよ。そんなに俺たちが信用できないのか!?」
「でもどうするの? あのマクゴナガル先生でさえ、数年もかかったって……」
「スネイプ、頼む……アイツの事は誰にも言わないでくれ……何でも言う事きくから一一頼む」
「ピーターはダマせたみたいだけど……あの二人には、かえって逆効果だったかもれない……」
「……覚えておくといいよ。ウソつきは必ず、このセリフを言う。『私はウソはつかない』って・・・ね」
「小さいころは、犬に噛まれた事なんてなかったのに……。イヤなケモノのニオイでもするのかな……?」
「お前がいつもドコに行くか教えてくれねぇンだあら、俺たちだってコレからドコ行くか、教える義務はねぇよなぁ?」
「悪い、遅くなった。誰かにつけられてる気がしたから、まいてきたんだ・・・一一あれ、ピーターだけ? シリウスは?」
「みんなを巻き込まないためには、僕はこの場にいるべき人間じゃないのかもしれない。一一それ以前に、僕は“人間”じゃないか……」
「ああ、そうさ。できるなら、早くここから消え去ってしまいたいね。もう、君の顔なんて見るのもウンザリなんだよ。二度と僕のそばへ近寄るな!」
「それで……どうするつもりだい? こわ〜いオオカミさんをココから追い出す? それだったら僕に話すより、校長に話した方が早いんじゃないかな?」
「九月は体調不良、十月は家庭の事情、十一月は試験前だから部屋にこもって強化勉強、十ニ月はクリスマス……。さぁて、一月は何が出るコトやら……」
「一一なぁ……アイツもしかして、何かカンケーあんじゃねぇか・・・? 待て、部屋に誰もいねぇか……? ほら、アレだよアレ・・・一一ヴォルデモート」
「ハイ、約束。小指だせ。イマは三人だけのヒミツ。アイツの誕生日の夜は、ちょうど満月だ……ひとりで腐ってる鳶色の狼サンを、みんなで驚かせてやろうぜ」
「おーい、カボチャジュース持ってきてやったぞー。……あれ? どこいったんだ? 具合が悪ぃから俺に持ってきてくれって言っ一一あ……アイツまさか、窓から・・・」
「大丈夫、必ずできるようにさせる。なんたってこのジェームズ・ポッターと、そのしもべがついてるんだぜ? いてっ! まくら投げるな、このへたれ! へたれへたれへたれ!」
「へぇ……君、ジェームズって言うんだ……。犯罪のナポレオンならぬ、悪戯のナポレオン一一『このホグワーツのほぼ全ての悪戯は、君の手によるのだ、ワトソンくん』……そんなトコかい?」
「だから……ココを出る前に言っただろ? 体調がよくないから、個室の部屋を借りてたって……。予定より少し帰りが遅くなったからって、いちいち騒がないでくれないかな。一一迷惑なんだよね」
「そりゃあ勉強熱心にもなるよ。僕らは変身術の授業が、とっても、とっても、とぉーっても、ダイスキなんだからねぇ? で、用がないならジャマしないでくれるかなぁ? スリザリンの優等生クン?」
「僕が走ると、『音』も走る……僕が歩くと、『音』も歩く……。誰かがつけてきているというのは、すぐに分かったよ……。だから、ワナを仕掛けておいたんだ……こういう“闇の魔術”は得意だからね……」
「そろそろ行くよ。分かってると思うけど、理由は聞かれても言えないから。僕のあともつけて来ないでね。それじゃ、また三日後に。僕がいない間も、授業サボったりするんじゃないよ。イタズラはほどほどにね」
「……分かったんだよ。彼が毎月、なぜホグワーツを出るのか……何のために、どこへ行っているのか……。でも、いまココでは言わない……。いつか、本人の口から直接、話してくれるまで一一待とうと思うんだ……」
「マダム・ポンフリー・・・今度は夜の間、強い睡眠薬を飲んでやり過ごそうかと思うんですが……あの、何でしたっけ。『生ける屍の水薬』ですか? アレって確か、睡眠薬でしたよね? 少し分けてもらえませんか?」
「それならポリジュース薬を作ろう……。アレにリーマスの髪を入れて、満月の夜に誰かが飲む。彼の姿になって、スネイプの前に姿を見せればいい……。寮が違うんだ、四六時中、顔をあわせるわけじゃない一一なんとか、なる」
「一一あまり僕に干渉しない方がいいと思うよ……でないと、思わぬ“事故”で命を落としてしまう・・・一一かも、しれないよ……? ほら、向こうで君の仲間が呼んでる……行ってあげなきゃ……ねぇ・・・一一“ブラック”くん?」
「未登録のアニメーガスは違法? ああ、その通り。知ってるさ、それぐらい。バレればアズカバン送りだねぇ。一一それがどうした? フン、構うもんか。違法どうこうより、『僕らには狼の友人がいる』ってコトの方が、重要度が高いねぇ」
「見れば分かるだろう、荷物をまとめてるんだよ。僕は今夜ココを出るんだ。一一ずっとじゃない。ちょっと体調が悪くてね。しばらく様子をみるために、僕だけ別の部屋で勉強させてもらうんだ。三、四日、様子を見て、また帰ってくる。一一さぁ、分かったらソコをどいてくれないか。さっきから邪魔なんだよ」
「勉強するには、まず本がいるだろう……図書館で借りると、カードに名前を書かなければならないから、足がつく。買うしかないねぇ。で、いくらなんでも一度に『アニメーガス』の本ばかり買ったら店員に不審がられる……手分けして、バラバラの本屋から買おう。満月の日ならリーマスとはち合わせるコトもない。一ヶ月おきに、ひとりニ冊まで。それ以外に、関係ない本も何冊か混ぜて買った方がいいかもしれない。無事に買えたあとは、この透明マントに本をくるんで、隠しておく……その辺に置いておくと、見つかるかもしれないからねぇ……コレでどうだい?」
「コレを見てくれ一一『狼の姿になった人狼は、人を襲う事を本能として求め続ける。襲う対象がいない場合は、自分を傷つける。動物に対しては人間を相手にした時より、襲いたくなる衝動が抑えられる結果が出ている。また、噛まれた人間は同じ“人狼”になってしまうが、動物は人ではないので、影響はない』。次に、コレだ。『animagus(アニメーガス)/動物もどき。動物に変身できる、高等魔法。犯罪に利用される事を防止するため、全てのアニメーガスは魔法省に申請・登録されなければならない。未登録のアニメーガスは違法となり、逮捕される。あまりに難易度の高すぎる技法であるため、二〇世紀、アニメーガスはたったの七人しか存在しない』。一一その『まさか』さ。僕らが『アニメーガス』になるんだ」
(リクエストありがとうございます)
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